紀州印工房では、金文調書体の印鑑を作っています。 金文調書体とは、まるで象形文字のような絵と文字が合わさったようなおしゃれでかわいい書体です。 ”金文”とは、金属(主に青銅製器)の銘文のことで、中国古代の殷から秦漢の時代に青銅器を鋳造(ちゅうぞう)する過程で、文章も同時に鋳込(いこ)んだものです。亀甲や獣骨の堅い骨にナイフで彫刻した直線が多い甲骨とは違い、金文は文章の鋳型(いがた)に粘土など柔らかい素材が使われ、自由に曲線を書けたために柔らかい曲線文字が表現されています。
金文調書体は漢字のみとなります。ひらがな、カタカナ、アルファベットがお名前に入っている場合は金文調書体ではおつくりすることが出来ませんのであらかじめご了承くださいませ。
なぜ漢字しか使えないのかというと、古代中国で使用されていた文字であること、ひらがなやカタカナは日本独自の文字なのでそもそも存在しなかったからです。
金文が使用されていた殷~秦・漢の時代というと、紀元前21世紀~3世紀といった古代です。日本はそのころ縄文時代~弥生時代の頃です。漢字は伝わってはきており、文字自体は認識していたそうですが、文章として使用するには程遠い状態だったといわれています。日本で漢字が使用されるようになるのは4世紀末~5世紀初め頃、カタカナが8世紀年頃、ひらがなは9世紀頃に考案されました。
漢字そのものは日本でその後も使用されるようになりましたが、その後にできたひらがな、カタカナは当然存在しません。アルファベットも同様です。金文調書体は、漢字であれば金文に存在しなかった文字(国字)でも代替となる文字を作ることはできます(その場合は篆書をあてはめるか、近い時代の書体でつくります)が、近い時代に存在する文字でなければ作成することが出来ません。
金文調書体は印鑑のご注文を頂く度に、一等版下士がその都度手書きでひとつひとつ作成しております。紀州印工房で金文調書体の印稿をつくっているのは大印展 版下の部で金賞を受賞した一等版下士人の職人です。フォントが存在しない(パソコンでは印稿を作ることが不可能)金文調書体の印稿を、金文の資料を見ながら下書きなしでつくります。
紀州印工房は高野山、熊野三山、熊野古道といった日本でも有数の霊的な聖地が存在する和歌山県、有田市(ありだし)において、一級印章彫刻技能士である上野山有徳が店主を勤めております、印面にこだわった印判店でございます。 印鑑は一級印章彫刻技能士である上野山有徳が1本1本すべて手仕上げ、書体は一等版下士が注文毎に一つ一つ手書きで作成。印鑑の神髄は印面にこそあり、という信念を持って印鑑作成に励んでおります。印材に凝ったり、奇抜さだけを狙ったりせずに、私たちだからこそできる、技術と知識を凝縮した唯一無二の印鑑を自信を持ってお届けいたします。